かけがえのないもののために

 巻頭言

 かけがえのないもののために

環境保全センター長 澤 村 正 也

(理学研究院教授)

  わたしたちはこの北海道大学において、日々研究、教育、学習、芸術、あるいはそれらを支える活動に力を注いでいます。目的を果たすと、達成感、充実感が得られます。そしてこれをエネルギーにして、また次の活動へと向かいます。この先にある究極の目的はいったい何でしょうか。

 突きつめると、誰もがより豊かで幸せなくらしを願い、これができるだけ多くの人のためになることを願っているのだと思います。そしてその幸せも、この美しい自然環境があってこそだと誰しも思うことでしょう。とすると、日々力を注ぐその活動は、自然環境に対して十分配慮されたものでなければ、まったく意味のないものになるのではないでしょうか。わたしたちの身の回りで、自然はそれ以外の何よりも美しく、高度に機能的であり、かけがえのないものだからです。

  「自分が豊かで幸せであればそれでいい」という人もいるでしょう。そういう人にはぜひ考えてほしいことがあります。本学出身の宇宙飛行士、毛利衛さんが学内で行われたある講演会で、およそ次のように述べられたことが強くわたしの印象に残っています。「あなたは1人で幸せですか。幸せは、あなたが深い絆で結ばれた人とともに思うものではないですか。そしてその絆は次の世代にも、さらにその次の世代にもつながっています。この美しい地球を残さなければなりません。」

 とはいえ多忙な現実の日々においては、誰しも身近な目標を達成することに心を奪われがちです。自然環境への配慮はしばしば面倒を伴います。早く成果をあげたいと思うと、つい配慮に欠けた行動をとってしまいそうになります。こんな時みなさん、自分の活動の先にある究極の目的は何だったのか、思い起こしてみませんか。それを行動規範として日々の活動をより有意義で質の高いものにしませんか。

 北海道大学は、自然豊かで美しいキャンパスに恵まれています。環境配慮への高い意識を持つには絶好の立場にいます。省エネルギー、ごみ分別・減量、排水・大気環境の保全、実験廃液の適正処理、化学物質の適正管理など、みなが高い意識を持って望み、北海道大学のレベルを向上させましょう。

 昨年度の本学の環境への取り組みと成果をまとめた冊子「北海道大学2005年度環境報告書−エコキャンパスをめざして−」が発行されています。みなさん、ぜひこれを一読してください。自らの置かれている立場、現状を知り、また仲間の努力を知り、これを北海道大学のレベルアップのための、みなさんひとりひとりの行動につなげてほしいと思います。なお環境報告書に関しては、岸浪建史副学長より本号に記事をご寄稿頂いていますので、そちらもぜひご覧下さい。

  毎年たくさんの学生が、高度な教養、専門知識・技能を持ってこの北海道大学から、社会の様々な場所に向かって巣立ちます。かけがえのないもののために努力する人であってほしいと願います。


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